大阪府公立高校入試合格への道

現役学習塾長が大阪府公立高校入試や教育について、いろいろ発信します。

暗記の心得

中高生が勉強している中で、一番の悩みと言っても過言ではないのが「暗記できない」ということです。

興味がなくて勉強する気にならない
という場合は置いておくとして、

読んでもなかなか覚えられない。
覚えられた気がしない。
全然進まない。

この3つが暗記に対する三大不満と言えます。今回は、この3つを中心とした暗記の悩みへの解決法についてお話したいと思います。
マイナスなイメージがある暗記という勉強ですが、これは子どもに限ったことではなく、大人も暗記で困ることは多いですよね。
たとえば、仕事でプレゼンをする時にはいちいちカンペを見ていては説得力に欠けるので、なるべく見ないように、話す内容を「暗記」してから臨みますね。
保護者代表でスピーチをすることもあるかもしれません。そんな時も「暗記」が必要です。
ちょっと買い物をする時だって、メモがなく、買うものを「暗記」しなくてはいけないかもしれません。
このように、暗記というのは勉強に限らず、色々な場面で登場する頭の使い方の一つです。


私が思う「暗記できない」という悩みへの対処法は、まず、暗記するということを捉え直すことから始めるというものです。

子ども達は大体、「覚えなくてはいけないであろうことを覚えよう」とするのですが、いったい「どの状態になったら覚えている」ことになるのか、わかっていない場合が多いです。

大人は結果を求められる場面で暗記することが多いのでわかっていると思いますが、「必要な場面で再現」できればそれは暗記した価値があることになります。

使う場面を想像できる場合、そのことをイメージすると、どこまで、どの程度暗記しなくてはならないかわかってきます。

そして、実際に使っている場面を想像しながら暗記の勉強をすると、ある一つの行動が出てくるわけです。

それはつまり、「こまめな再現」です。

たとえば赤シートを使って覚えようとしている子をみると、赤シートで隠さず覚えたものを、赤シートで隠した後に正しく言えるかどうか確認していることが多いです。

これが再現です。
テストの時には、その精度に差はあれど、再現できればいいのですから、覚えたものを自分の頭の中に入っているデータを根拠に再現できれば、それは一つ暗記が出来ていることになっているわけです。

子ども達が暗記の勉強をする時は、この再現のイメージが共有できているかどうかで、かけた時間のわりに覚えられているかどうかが変わってくるように思います。

さて、それでは、冒頭に書いた通り、3つの悩みについてそれぞれお答えしていこうと思います。


① 読んでもなかなか覚えられない。
読んでもなかなか覚えられないというのは、暗記の難しさを軽んじているから出てくる発言だと思っています。
そもそも、自分が知らなかったり興味がなかったりすることを、自分の頭の中にいれて、いつでも外に出せるようにするというのは相当大変なことです。
元々少し知っていたり興味があることに関してはスルスルと頭に入っていくのは、暗記の特徴の一つだと思います。
そもそも、相当の時間がかかることが前提の作業ですので、根気強く取り組むしかありません。
なかなか覚えられない場合、書いたり、声に出したり、クイズにしてもらったり、いろいろなやり方で内容と結びつきを強めていき、なんとか覚えられるまでやるしかないということになります。

② 覚えられた気がしない。
暗記したことが覚えられたかどうかというのは、再現できるかどうか試してみるしかありません。
本当に覚えたかどうかは、使ってみるまで誰もわからないのです。
良い確認の仕方は、一問一答や単語テストを解いてみて、できるかどうかを確認してみることです。
また、表や図などを全て覚えないといけない場合は、白紙を用意して、覚えたことを全て書けるか試してみることも有効です。
確認作業は難しいと感じられると思いますが、できなくても問題ありません。
覚えたことを使おうと頭を働かせることに価値があるからです。
できなかった場合、書けなかった部分をもう一度覚えなおして、再度チャレンジしてみましょう。

③ 全然進まない。
先ほどのお話とも重なりますが、暗記にはどうしてもそれなりの時間が必要となります。
確認作業を行って、きちんと覚えるために必要な時間は人それぞれ異なります。しかし、その作業を踏むことでしか、覚えることはできないのです。
定期テスト前など、時間制限がある場合は、いつまでにどこまで覚えなくてはいけないか計算をして、その後に一日あたり、一時間あたりと覚える量を決めていくことが有効だと思います。
進まなくて不安である時は、見通しをたてて取り組んでいくとストレスが減るように思います。


最後に、記憶の性質を利用した暗記のコツをいくつかご紹介しておきます。

・なるべく接触回数を増やす
たとえば、1時間かけて100個の単語を覚えきったと言い張っても、初めて覚えたことは忘れていく速さもはやいと言われています。
そのような時間の使い方をするなら、10分で100個の単語をザっと確認する作業を6日間続けた方が、最終的な定着量は多いはずです。
ただし、あまりにも暗記の時間を短くしてしまうと、それはそれで全く定着せず記憶にならないので、あまり時間をかけすぎずにたくさんのことを繰り返し覚えようとする、という意識で勉強するのがいいでしょう。

・7個ずつで覚えてみる
単語などを人が一度に覚えられる適正量は7個だそうです。もちろん個人差はあり、もっと多い人も少ない人もいるとは思いますが、7個前後をひとまとめにして覚えていくのはいい分量感だと思います。7個覚えたら次の7個を覚える、という

また、暗記するときには「何個おぼえたか」を意識するといいと思います。
たとえば、は虫類の代表的な動物を「ヤモリ、カメ、ワニ、ヘビ」と覚えたとすると、思い出そうとしたときに4つ言えなければダメということも合わせて覚えておきます。4つ言えない限り、絶対に覚えられていないということになるので、思い出すまで考えることができます。
これは、いろいろな暗記に活用できる方法です。

・暇なときに思い出してみる
たとえばお風呂に入っている時、歯磨きをしている時、寝る前など、思い出さなければいけないことにして、今日何を覚えたか、頭の中で思い出してみるのは効果的な方法だと思います。
とにかく、「何もヒントがないところから情報を再現できる」ようになることが重要なので、別に紙やペンや覚えるものがなくても、再現をやってみることでいつでも暗記の勉強はできるのです。むしろ「あれー、思い出せない、なんだったっけ?」となる方が、強く記憶に残り、定着が進むように思います。

・平等ではなく、覚えにくいものはしつこく覚える
たとえば100個の単語を暗記するとき、必ず、簡単に覚えられる単語となかなか覚えられない単語があるはずです。
簡単に覚えられるものは、今までに聞いたことがあったり、なんとなく覚えやすかったりするもので、すぐに再現できるレベルになります。
一方、覚えられないものは、全然再現できなかったり、何回覚えてもすぐに抜けてしまったり、自分と相性の悪いものです。
そのような場合、覚えられないものに暗記時間を偏らせていくことは有効な手段と言えます。
よく生徒に例えるのですが、墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)という言葉は、初めて聞いた時は長くて覚えにくいものだと思うはずですが、誰かに10回連続で言葉と意味の説明をされると、さすがに響きと意味を覚えてしまいます。
つまり大事なのは、覚えにくいのは自分との縁(結びつき)が弱いためであり、無理矢理自分との結びつきを強くする試みをすれば、嫌でも覚えていってしまうということなのです。
意図的に結びつけないといけない理由は、その言葉を覚えなくてはいけないから、ということでしかありません。
本来、自分が嫌いなものや苦手なものは本能的に避けようとするのは、暗記でも同じことのような気がします。
興味がなかったりよくわからないものは、全然定着しないのです。
それでも、勉強ではどうしても覚えなくてはいけないことが出てくるため、本能に反する工夫が必要になるのです。
本能に反するため、やっているときは全然面白くないと思います。
それでも、自分が覚えられないと思ったものが覚えられるようになるわけですから、やってみる価値は十分にあると思ってください。


久しぶりの投稿なのにだいぶ長くなってしまいましたが、勉強で悩んでいる高校受験生に参考にしていただけると幸いです。