大阪府公立高校入試合格への道

現役学習塾長が大阪府公立高校入試や教育について、いろいろ発信します。

大学受験用英語勉強法

高校受験からだいぶズレますけど、本業の都合上こんな記事を書きます。

全体戦略について

受験英語は特殊なジャンルで実用英語とはまったく違うことを心得るべきだ。つまり、英会話学校の英語ではない。
単語熟語の語彙力、文法力、構文把握力の力(基礎力と呼ぶ)を身につけた上で、長文力をしっかりつけていけばよい。英作やヒアリング力は基礎力がついた後でよい。高校のカリキュラムを否定するわけではないが、ひとり一人に必要な勉強内容は絶対に違う。なんとなく全体像を掴むための勉強として学校の授業を受けることはいいかもしれないが、入試を突破するために必要な勉強は、あくまで自分にしかできない。
経験上、大半の高校3年生(進学校に所属する子であっても)は中学英語の復習から始める必要がある。高校英語のその実は、中学英語で構成されている。中学英語がしっかりと定着していれば、少し毛の生えた程度の文法と、膨大な単語・イディオム・構文の知識を身につければいいというわけである。

単語力、熟語力、語彙力

単語熟語の語彙力をどうつけるか。市販単語集を覚えたり、日々でてくる単語をまとめたり、そのような勉強でよい。

語感という言葉がある。その語源に基づいて、ある特定のアルファベットの並びが、ある意味を表す。「なんとなくこんな意味である」という感覚を身につければ、推測力も上がるのである。受験では不明な単語が必ずと言っていいほど出てくるが、文脈と語感センスでわかるのである。これは読解する上で大きい。
Next Stage(桐原書店)では品詞違いの語が一覧となってまとまっていたり、市販単語帳でも派生語が記載されていたりすることが多い。古文単語もそうだが、色々な単語と結び付けて覚えるとよい。

尚、単語帳は前からやることが多いはずなので、暗記濃度は通常前半の方が高くなる。後ろからやったり、セクションに分かれている場合はセクションごとにやったり、100単語ごとにグループ分けをしたりして、濃度の偏りがないように心がけたい。
また、「書いて覚える」は受験英語に関しておすすめしない。今後の受験制度の変更ではWritingの比重が大きくなる可能性があるため全否定するわけではないが、現行制度においては圧倒的にReadingの比重が大きい。読んでわかればいいのだから、時間効率の悪い筆記を勉強に加える必要はない。もちろん英語に限ったことであり、計算や図示が必要な科目(数学や物理)においては大いに筆記すべきだろう。

文法力

先述したが、中学英文法の問題集をやるべき高校生が圧倒的に多い。
わかっていると思い込んでいるような人ほど、薄いものでいいので中学内容からやるべきだ。

参考書:チャートやブレイクスルー
問題集:必修英文法問題精講(旺文社)

基本や基礎と書いてある問題集をしっかりやればよい。まず目次を読み章の数を確認する。およそ20~30章で構成されているはずである。次に、参考書を1章ずつ読んでいく。1章読み終わったら、同じ単元を問題集で解く。解いていく上で重要な習慣が、単語にしろ文法にしろ、わからないことは徹底的に調べたり質問したりする。なんとなくで通過してしまうと、結局あとでまた同じことで悩むことになる。

初めに扱う易しい問題集が終わったら、Next Stageや即戦ゼミなどでアウトプットの回数を増やし、定着をさせていこう。その後は入試問題演習にしかないのであるが、新しい問題集を解いても、正答率が100%になることはそうそうない。しかし、センスは磨かれているので、正答率は徐々に上がっていくはずだ。
センターの過去問や私立大学入試の過去問を扱う中でも、参考書や辞書、単語帳で調べたり、疑問点は先生に聞いたりすることを忘れてはいけない。

構文把握力

受験英語の長文を読むには、まず、難しい文法やイデイオムを用いた短文をしっかり直訳する能力;構文把握力が必須である。これを鍛える前提条件としては、ある程度の単語力、熟語力、語彙力、文法力があることなので、まずこれを鍛えよう。

構文把握力強化の定番教材はやはりNext Stageか即戦ゼミ8である。
これらの本は受験に必要な構文知識をある程度網羅している。初学者にとっては難しい教材ではあるが、先に挙げた力がそれなりについてきたら、解き進めることができるだろう。

すべてのページが該当するわけではないが、左側に入試問題から抜粋した問題、右側に答えと解説が書いてある。これらの問題は、初めに解いたときは大体わからないはずである。しかし、単語力や文法力がついていれば、推理することができるはずである。
文法力の勉強と一緒で、不明な単語やイディオムが出てくればまめに調べることは必須である。この地道な作業を続けることはとても重要だ。
問題を解く➡答えを見る➡解説と本文訳を読む➡わからない単語を調べる、という流れで勉強が進められれば、2周くらいで十分に力がつく。

長文読解力

長文の読み方は2種類あると言われる。速読と精読である。
速読は、主に単語や熟語の意味を拾いながら素早く文の意味を理解する読み方である。英語の文を日本語の文にいちいち翻訳しない点が特徴で、意味だけを拾っていくのである。
対して精読は、単語や熟語の意味はもちろん、SVOCや修飾関係などの文構造をしっかりと整理して、意味の通る日本語訳にする読み方である。
これらの読み方も、単語力、熟語力、文法力、構文力があることが前提でできることだ。通常、高校では精読の授業をすることが多い。これは理に適っていて、精読の力がなければ、速読をしても破綻することが多いのである。
そもそも速読というのは、そうしなければ入試では時間切れになってしまうから行うテクニックである。ザーッと読んで意味を理解できるようになるには、ゆっくり読めば意味が理解できる前提があって可能になるはずだ。
私も、精読の勉強から始めることをおすすめしたい。

基本的には300語くらいで構成されている英語長文の、単語の意味を全て調べ、SVOCを全て洗い出し、直訳の文を作りながら、日本語で意味の文に編集するという作業から始める。
英語が苦手であれば中学英語の長文から始めてもよい。

結局、出てくる言葉や文法が難しいだけで、どんな英語長文でも精読においてやることは変わらない。とにかく丁寧に、徹底的に、その文の意味を考えるのである。

時間がかかって仕方がないと思うだろう。しかし、それが最高の英語の勉強になるのだ。難関大学の入試になると、未知の言葉が出てくる。単語自体はわかっても、組み合わせで新しい意味になる言葉は日本語にもある。精読を行っておけば、直訳から本来の意味を導くセンスが磨かれる。柔軟になる、と言うのだろうか。とにかく、英語の意味をスムーズに理解できるようになるのだ。

徹底的に読む潰した英語長文は、必ずあなたの能力の糧になる。
精読である程度自信がついたら、速度の練習をしてみてもいいと思う。(実際に時間制限を設けて過去問に取り組むうちに、速度は上がっていくものだが)

英作文力

英作文は、正直、受験英語で重要視されるものではない。

英語を日本語にする作業よりも、日本語を英語にする作業の方が圧倒的に難度が高い。しかし、英作文を行うことで今まで自分が学んできた言葉や構文を使いこなすことになるので、読解力の向上にも影響する。できるかできないかよりも、やってみようとするだけで価値のある勉強ではある。

英作文は一部の私立大学と、国公立大学の二次くらいでしか出てこない。そのため、わざわざ英作文の勉強をたくさんする必要はないのである。

入試における英作文のコツは、問題になっている日本語文をできるだけ自分が英作しやすい日本語に変えて、また、自分が使える程度の単語と構文だけを使用して文を作るということである。英作文で出される日本語の文はだいたい難しい。それを、自分なりに編集し直すことさえできれば、それほど高度な英作文力は要らないのである。

英作文は、その答えの多様性から、自分の回答が問題集の解答と一致しない場合が多い。そのため、先生に英作文をチェックしてもらう必要がある。自分一人で勉強する場合は、解説の解答例をしっかり読み込んだり、英語の基本文を暗記したりする勉強に努めよう。

ヒアリング力

これはセンター対策が主になる。日本人の場合、1000時間集中して連続して英語を聞いていれば、大体わかるようになるそうだ。
しかし、受験生にとってはそんなに時間はない。いかに効率よくやるかだ。できれば、毎日15分、英語のテープを休み時間や通学時に流して聞く習慣をつける。毎日10分でもよい。そして、週3回集中して30分は、わからないところは繰り返しながら、時には英文をまるごと書いて、自分の弱点を強化する。

耳を鍛えるには習慣しかない。日頃から英語を耳にする習慣を無理やりつけなければ、ヒアリング力は向上しない。
また、ダラダラ聞いているだけでもだめだ。聞きながら英語のスクリプトと読んで、発音の特徴を掴もうとするのも大事だ。もちろん、日本語の意味はあらかじめ予習する前提である。

まとめ

最終的には、まだ自分が出会ったことのない問題や言葉に出会っては習得していく作業になるのが英語である。日本の受験英語はある程度範囲の制限があることが救いで、これが範囲制限なしの英語の問題になってくるようであれば、もはや英語漬けになるしか対策はないように思う。
国語も英語も言語である。言語はとても便利なコミュニケーションツールである。できれば書けるようになることが望ましいが、ますは英語で何が書いてあるかが読み取れることが最重要だとして、そのために必要な知識を基本から身につけて欲しい。

自分の経験で言うと、やはり語彙力が盤石になってからは英語の成績が安定した。わからない言葉がなければ、あとはパズルのような感覚で解けるところもあるので、理系で英語が得意な人が多いのもそのためであると思う。逆に、語彙力がなければルールではないところで失点を繰り返すので、点数が安定せず困ってしまう。
基礎が大事であるのはどの科目でも同じである。