大阪府公立高校入試合格への道

現役学習塾長が大阪府公立高校入試や教育について、いろいろ発信します。

大阪公立高校入試 直前期戦略まとめ

中学3年生は2学期の定期テストが終わり、内申点もほぼ決まっている状態になりました。
学校の定期テストを頑張る意義は
①入試のための基礎固めを兼ねた勉強
内申点確保のための要素
に分けられると思いますが、年明け以降のテストでは②の意味が薄くなると思われます。

さて、現行の大阪公立高校入試では内申450点(中1~中3を1:1:3として、5段階評価×10倍×9科目)と入試本番の点数450点(90点×5科目)をベースとして競争し、ボーダーゾーンという仕組みがあるにしろ、基本的には総合点の高い順に合格という制度になっています。

各高校が国語・数学・英語について3段階のレベルに分かれているもののどれを採択するか、また、内申点と入試本番の得点の傾斜のどれを採択するかによって戦略が変わりますが、現時点で、内申点という入試前の持ち点がおよそ決まった状態だということを理解しておきましょう。


さて、それではこの12月半ばから3月10日までにやるべきことをざっとまとめておきたいと思います。まず、レベル帯によってそれぞれ何を考えるかについて述べたいと思います。

①偏差値45までの学校を受ける場合
A問題を採択、若しくはB問題を採択していても、例年20人程度しか不合格者が出ない高校を受験する人に向けての戦略をお話します。
まず、英語の得点は皆高くないので、受験勉強としての英語は後回しにしていいです。
これは、英語を全く勉強しなくていいというわけではなくて、高校入学後のことを考えると中2の基本までの復習はしておいた方がいいとは思いますが、偏差値45くらいまでの子がB問題の長文2題、英作文1題をしっかり取れるように準備できるなら、もう少し高いレベルを目指しているはずということです。
というのも、高校入試の5科目は平等の難易度ではないのです。
たとえば、成績が良くない子が勉強をしていないのになんとなく数学や国語で点数をとれてしまうなんてことがありますよね。このように、あまり勉強をしていなくても取りやすい科目とそうでない科目があるわけです。
そして、英語は5科目の中でも何となく取れるようになる出題のされ方はしていません。

1つのスペルミスや順番のミスで0点になる小問が数多くあり、勉強が苦手な子にとってはかなり難しいと感じられると思います。ですので、偏差値が高くない高校の受験生は皆同じくらいの点数になると予想されます。

一方、社会や国語の漢字、数学の計算は差が付きやすいので要注意です。
つまり、多少勉強が苦手であっても「練習の積み重ね」「慎重さ」「集中力」など努力によってすぐに得点になりやすいポイントは、やる子とやらない子で大きな差として現れます。
実力テストや模試で「数学・英語が良い点数」タイプと「国語・社会が良い点数」タイプでは、「国語・社会が良い点数」タイプの方が高くない偏差値帯の受験には向いていると言えます。
難問は取れずともよく、コツコツ積み重ねた努力によって基本問題が取れるようになっていることが最重要といえるわけです。

○まとめ○
偏差値45までの学校を目指すなら暗記系・計算系の勉強に力を入れていこう!

②偏差値45~60の学校を受ける場合
目安としてはB問題採択、若しくは一部の問題だけC問題を採択している高校までのレベルを受験する場合についてです。
おすすめは、2月までは理科・社会の暗記の復習に時間をあてるということです。

大阪公立高校入試の入試問題の特徴として、理科は「問題文がとても長い」、社会は「資料読み取りが多く、時系列問題を出されるが基本的な問題が多い」ということが挙げられます。
実際に、全体の平均点では例年理科の方が社会よりも5~10点ほど低くなっていて、社会はとりやすく理科がとりにくいという印象があります。

理科は問題文が長く、およそ半分で計算要素が入っているため、理科の計算に苦手意識を持っている人はとても難しいと感じると思います。しかし、問題文が長いとはいえ、用語についての問題の難易度は高くなく、同じような実験で聞いたことのある指示薬や物質の名前を書くと合っているということもありえるレベルなので、一問一答問題集などを利用して、「どの言葉とどの用語が一緒に使われるか」知っておくと良いと思います。
たとえば、【時代についての化石は示準化石】【小腸といえば柔毛】なんていう雑な覚え方でもいいでしょう。

社会は、地理歴史の基本があやふやな人は教科書を読むところからしっかりと時間をとった方がいいと思います。たとえば偏差値60くらいの高校を受けるのは、学校の実力テストでは300~350くらいとれる子が多いと思いますが、その子達の一番の弱点は暗記だと言えます。
数学で難しい問題が解ける天才肌の子の数学80点と、コツコツ時間をかけて暗記をした努力型の子の社会80点は、入試で同じ得点価値を持ちます。たくさん勉強をしても数学や英語で圧倒的な差をつけることができないということはあると思いますが、社会は努力によって点数をグングン上げやすいため、努力していない子とはっきり差をつけることができるので、数学や英語の差なんて余裕で補えてしまうわけです。

「でも皆も社会や理科の暗記を徹底するかも・・・」と思うかもしれませんが、偏差値60くらいまでなら徹底していない人も大半です。自分に甘い才能型の子や、理科社会よりも難しそうな英語数学に時間を割き続けている子が多いはずです。
極端に言い切ってしまえば、今までの模試で志望校判定がCくらい出ているのであれば、これからの勉強を全部理科社会に振っても問題ないと思います。それくらい、理科社会の得点のしやすさは英語数学と違って楽なのです!
ちなみに国語は漢字や過去問はやるべきだと思いますが、大体みんな50~70くらいになるはずなので、差をつけやすいというわけではありません。

○まとめ○
偏差値45~60くらいの高校を受験する場合は、少なくとも冬休み終わりまでは理科社会の復習に全振りしよう!

③偏差値60以上の高校を受験する場合
C問題採択の学校を受ける子についてアドバイスです。
このレベル帯は基本的に学校の内申点がオール5がほとんどであり、また、入試:内申=7:3としている学校が多いため、いくら内申点がよくても全く有利とは言えません。オール5でも落ちることはざらにあります。
つまり、「入試本番で落ちる側に回らない点数を5科目総合でどれだけ確保できるか」という点に集中して考えるべきです。

大阪トップ校(文理設定のある10校など)とそれ以外では目標点数割合に5%強ほど差があります。本番で75%でいいのか、80%でいいのか、ということを考えていくことになります。

30点を40点に上げることよりも、80点を90点に上げることの方が難しいのは、多くの人が理解できると思います。この世の中にあるどのテストでも、各問題において受験生の正答率が一律で同じということはあり得ません。
ここまでの偏差値帯であれば、たとえば全体の正答率が30%くらいまでの問題をとればいいという感覚でよかった、つまり、難しい問題は捨てても、競争相手も大体解けていないので合格に影響はないという感覚でしたが、上位校受験ではそういうことにはなりません。

基本問題が解けるのは超最低条件であり、見たことのある難しい問題が解けるのもできなくてはいけないことであり、見たことのない難しい問題でもいくつかは解けなくてはいけないということが求められるのです。
C問題である国語・数学・英語ですが、この中で一番得点しやすいのは国語だと思います。
もちろん、数学が大好き、英語を小さい頃から習っているという子はこの限りではありませんが、特別な特徴のない多くの子にとってまだ太刀打ちできる見込みがあるのは国語でしょう。国語から始め、他2科目の特徴と対策について述べたいと思います。

・C問題国語の特徴
B問題や他の入試、模試との違いは何と言っても記述問題のボリュームです。70字程度の記述が3問ほど出ることに加え、作文問題も「好きな季節についてエピソードも踏まえて述べなさい」のような思いつきやすいものではなく、どのように何を書くか考える時間を設けなくては思いつかないようなテーマが出題されます。
また、当然に文章中の言葉や古文のレベルも難しく、「今までで一番面倒くさい国語のテスト」と思うに違いありません。
しかし、粘り強く読むこと、そして時間をかければ、ある程度勉強ができる子であれば答えっぽいものを組み立てることはできるはずです。
あとは制限時間の問題となります。たくさん読み、難しい言葉にも翻弄されず、長い記述をスムーズに組み立て、作文も仕上げる・・・といった、適切な問題処理能力が問われていると言えるでしょう。

・C問題数学について
C問題数学はおよそですが、「小問集合、関数、平面図形、空間図形」といった感じの問題構成です。小問集合では整数問題が記述問題として出題され、これは学校の授業でも単元として扱うことがなく、特別な練習を積まなければ対応できるわけもない問題となっています。また、後半の図形の2題はそれぞれかなりの難易度を誇り、相似や三平方の応用問題を解けるようになった前提で、さらに問題傾向に合わせた特訓がなければ全く解けずに終わるということもあり得る問題です。
最近は問題が多くの学習塾によって対策が行われるようになったため平均点が上がっていますが、C問題が採用されるようになった当初は全体の平均点が30点前後ということもあった恐ろしい科目です。
ちょっとやそっとの努力では手も足も出ずに50%を切るということが平気で起こりうる科目なので、要注意だと言えます。

・C問題英語について
C問題英語は、英検2級以上を取得していると得点読み換えができるという制度があり、2級取得者は80%の得点が保証されます。この制度自体を知らずに3年生になる子もいるようですが、英検2級となると高校卒業程度の学力が必要と言われますので、相当の準備が必要であり、中3になってからでの取得は難しいケースが多いでしょう。
入試本番8割と英検2級取得では、難易度的にもチャレンジ回数的にも英検2級取得の方が圧倒的に楽です。実際に受験経験者が口を揃えて言っています。
そのため、まずは早期の英検2級取得を目指すことをおすすめします。

しかしながら、英検2級をとれなかった子、また、その80%保証でも心もとないレベルの争いとなる最上位校狙いの子は、やはり本番での高得点を狙うことになります。

C問題英語の最大の特徴は「筆記30分、リスニング25分」という非常にアンバランスな時間制限です。
筆記では英作文以外は記号選択形式ですが、問題文はすべて英語、恐ろしいほど膨大な量で、英作文もかなり難しいものとなっています。初めてC問題を解いた子は全員が面食らうことになります。学校の実力テストでいくらいい点数をとれていても、それとは全く異なる能力を鍛えなければいけません。
具体的には、多読・速読力、そして自分の意見を的確に伝える英作文力です。
ヒントの多い文法問題や、時間に余裕のある長文問題を解くのではなく、全力で解き進めても時間が足りないという極限の状況下で丁寧な英作文を仕上げなければなりません。

リスニングは全体の3分の1を占める配点ですが、これも速くそれなりに難しく、そして最後の英作文問題は筆記同様に、学校の実力テストのレベルを大きく超えた内容となっています。初めから英作文をすべて捨てる前提で取り組んでいた子もいたくらいです。
最上位校狙いの子はそう行きませんが、C問題採択の最下位校では、他科目の得点を考慮すればアリかもしれません。
それほどに、C問題3科目の中で圧倒的な難しさを誇ると言えます。


以上がC問題の特徴になります。
このC問題と理科社会の平均得点率でおよそ70%を超えなければ、C問題採択校の合格は厳しいものになります。

さて、それではどのような対策がとれるでしょうか。

くりかえしになりますが、大阪公立高校入試では理科社会は受験校によって問題の種類が異なるということはなく、理科社会の問題の難易度が圧倒的に低いです。
そのため、やはり上位校を目指す場合でも、理社の満点狙いが必須です。

理科社会の得点の貯金をもってして、合格最低ラインを超えるために「国語、数学、英語のどの科目で何点まで落としていいか」逆算することが大事だと思います。

たとえば、過去問でC問題を1年分解いてみたところ、国語と数学で頑張れそうと思った場合、まずは国語と数学の勉強量をめちゃくちゃ増やしていきます。
具体的には、過去5年分のC問題を解き、市販で売られている対策本や塾でもらえる対策問題集を片っ端から解きます。
そして、解説をよく読み、解き方・考え方をよく理解するように努力します。
どの科目もそうですが、「問題を読む➡解く方針が思いつく➡ミスしないように解く」という処理ができるのがベストで、解く方針が思いつかない問題でも「問題を読む➡よくわからないのでわかることを書きこんでみたり補助線を引いてみたりする➡わかることが増えてきて解き方が見えてくる➡ミスしないように解く」という流れで進められるかが大事です。

その力をつけるためには、難しい問題の解き始めやポイントを多く覚えておく必要があります。たとえば例を挙げると、「空間図形の問題は平面で捉えなおす」とか「整数問題では具体的な数を入れてみる」とかです。
そんなことは学校の勉強レベルではやらないことです。
今まで学校のテストで良い点数をとってきている子でも、このような取り組みは経験して来ていないわけですから、修行のような時間をとって取り組むしかありません。

今の時期に、そのような勉強ができていない子は、今日からすぐに始めるべきだと思います。

また、例として国語・数学でとろうということを書きましたが、現実的にその作戦がいいと思っています。先にも書いた通り、英語の高得点狙いは絶望的に難しく、英作文は2月後半に取り組むべきであって、まずは速読力を上げて処理能力の向上に努めます。今から英語の高得点狙いを追っていくことは危険すぎると思います。
2月後半時点で、他の科目が比較的安定していれば、毎日英語に全力を注ぎ70%を超えることを目標にしていく・・・というのが良いでしょう。

○まとめ○
C問題採択上位校を目指す場合、「理社の満点狙い」「国語数学の過去問演習と似たような問題が載っている問題集を急ぎつつ丁寧に進める」「2月後半に4科目が安定していれば英語に力を注いで底上げをする」という流れで進める!



全体を通して共通点は「暗記系、理社の重要性を意識する」ということでしょうか。
難しい問題を解けることが大事なのではなく、教科書や参考書に載っていることを多く知り、知っていれば解ける問題をこぼさず取り切るということが大事なのは、どのテストでも同じことだと思います。
正直、大学入試よりも高校入試の方がシビアな側面があり辟易する部分もあるというのが個人的な意見ですが、自身が3年間過ごす環境を自分の努力で勝ち取るというチャレンジとしては、これくらいシビアな方がいいのかもしれませんね。

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