整数問題対策について
今年の大阪府公立高校入試は、一部の単元が出題されないことになっている。
そのため、出題範囲の中で、上位層をふるいにかけるための問題が作成されるはずである。
昨今、中高の数学指導では整数単元の重要性が高まっている。
大阪府の入試も例に漏れず重要視している傾向にあるので、今年は特に対策をしておきたい。
かといって、中学校で特に単元として学ぶことはないのが整数問題である。
正直、塾に通っていない人が対策するのは難しいと思う。
そこで、今回は整数問題への取り組み方についてポイントを伝えることにする。
以下は2020年度入試C問題からの抜粋である。
次の二つの条件を同時に満たす自然数nの値を求めなさい。
・2020-nの値は93の倍数である。
・n-780の値は素数である。
言葉の定義を捉える
整数問題に取り組むにあたり、特に重要なのは、言葉の定義をきちんと捉えることだ。
自然数・・・正の整数(1とか3とか100とか)
倍数・・・その数の段のこと。整数kを使って、93kなどで表すことが多い。
素数・・・その数と1以外に因数を持たない数。因数とは、その数を割り切ることができる数のこと。
素数の並びには特に規則性はない。小さい数は6の倍数前後に位置しやすいくらいで、あとは数えるしかない。
2桁の数では、九九で耳にしたことのない数は素数である可能性が高く、2以外はすべて奇数である。
数の特性をおさえて、きちんと定義を捉えることが重要なのは、そうすることで調べる範囲を狭めることができるからだ。
実験してみる
次にやるべきことは、たとえばの数を考えてみることだ。
たとえば本問では、「nが1ならどうだろう、2ならどうか・・・」と、具体的な数字を当てはめてみる。
そうすると、n-780が素数であることから、n-780は自然数でなくてはならず、nが782以上であることがわかるはずだ。(素数は2以上の整数だから)
どれくらいの数字であるか検討をつけて、範囲を狭めることが、考えを進めるうえで重要だ。
この実験については、実は方程式の利用や図形問題でも重要な取り組みである。
問題に適さない数字が答えとして出てしまったときに、修正をかけることが可能となる。
答えの検討をつけず、愚直に計算だけ行うのではミスを防ぐ機会を失っているのである。
素因数分解や方程式を立式することで、求める値の仕組みを探る
理想は「方程式の中に因数分解された式を持つ状態に変形」することができれば、ゴールは近い。
2020-n=93kと置いてみたり、n-780=pと置いてみたりする。(kは整数、pは素数)
そうすると、二つの式はnを利用して合体することができる。
1240-93k=p
ここから、kに順番に数を当てはめて素数になるものを探してもいいのだが、素因数分解をしてみると次のように因数分解できることに気づく。
31(40-3k)=p
ここまでくると、pが素数であることに気を付けると、次のことがわかる。
pが31×(整数)である以上、この(整数)の部分が1でない限り、pは素数になりえない
31×2以上の数、である時点で、因数は3つ以上存在し、素数でなくなってしまうのだ。
というわけで、40-3k=1ということが確定するわけで、k=13ということがわかる。
ここで、求めたい値はkではなくnであることに注意して、nを求めると、n=811となることがわかる。
すぐに閃くわけじゃない。あれやこれやとやってみる必要がある。
整数問題は、解くためにある程度コツが必要なのは確かだ。
しかし、一つ言えるのは、天才的に閃くから解けるという類の問題ではない。
与えられた情報を整理して、式を立てて組み合わせ、因数分解された式を含む方程式を目指すことができれば、どこかでわかってくるという感じだ。
途中で考えられるものをすべて代入して数を求めてもいい。
それも一つの解き方なのだ。
中学で習う数学は、きれいな形の解き方を中心に教わるわけだが、数学は本来泥臭い実験のもとに検証されてきた学問である。
ひとつひとつ代入という行為も、著名な学者ですら行ってきたことなのだ。
入試という、時間制限のある中でテクニックを競う場であるため、悠長なことを言ってられないという気持ちはわかる。
しかし、整数問題については、中学校で詳しく習わない以上、その場の馬鹿力的な取り組みが求められているということを忘れずにいてほしいと思う。